Jan.25, 2022

 

このコラムにあるメイコさんの夫になった人とは作曲家の神津善行さんだと思う。神津さんは長生きで先日もテレビで奥さんのメイコさんと元気に出演されていたが、私はカンテレの音響効果の担当者としてドラマの音楽打ち合わせや録音のために東京の青山アバコスタジオへ出張、作曲の神津義行さんとその頃珍しかったシンセサイザーを使った音楽で関西テレビの開局15周年記念ドラマとなった花登筐作「どてらい男やつ」の制作、高視聴率競争を共に格闘した。丁度その頃の1973年に私も結婚した。脚本の花登こばこ(筺)さんは作家のバーナード・ショーを尊敬されていてそこから自分の作家名を花登筺と付けられたがバーナード・ショーはアイルランドの脚本家、作家で「人生とは自分を見つけることではない。人生とは自分を創ることである。」という言葉で有名な作家で、代表作に「ピグマリオン」「シーザーとクレオパトラ」などがありノーベル文学賞も受賞された。花登筺さんは私が入社したころ、浪花の根性ものの数多くの作品例えば「細うで繁盛記」などで高視聴率を取る有名な多作の人気作家で、私にとっても最も印象深い作家さんだ。この文にあるように「上を向いて前進する」、正にテレビの世界、華の時代を生き抜いた戦士の姿、、、懐かしく、遠い思い出だ。

1963年(昭和38年)4月、京都の同志社大学を卒業して開局5年目の関西テレビに入社、音響効果の担当者として数々のドラマやバラエテイ、ドキュメンタリー等の制作現場を歩んだが、なかでもドラマの効果担当として頑張った十数年は忘れられない日々だ。この項に書いたテレビドラマ作家の花登筺さんは母校の同志社の先輩でもあり親近感もあって彼の幾つものドラマで私もテレビの過酷な視聴率競争に明け暮れた。1966年の正月単発番組「元旦一泊二日」で初めて花登筺作品に起用され、その年には当時の高視聴率ドラマの「土性骨」で、そして私が結婚した年の1973年には西郷輝彦主演で関西テレビの開局15周年記念番組となった「どてらい男やつ」で、「どてらい」はシリーズ「丁稚・独立編」、「総集編」、第2シリーズ「戦争編」と1977年に第6シリーズまで続いたがこの高視聴率のドラマの初期に私はこのドラマの音響効果を担当した。花登さんは猛烈に忙しい作家で大いに私達は振りまわされたが、このドラマ「どてらい男」だけは忘れられない想い出深い作品となった。私はこのドラマ」を最後に社内異動で傍系のエイトプロダクションのディレクター、プロデューサーに転身、そしてこの先エイトプロで数々のワイドショーやローカル番組を担当した。

 

エイトプロ時代にプロデュースしたローカル旅番組のZIP、平成元年に始まったが何年続いただろう?

 

連ドラ「どてらい男」で主演した西郷輝彦(本名今川盛揮、鹿児島県出身)が2月20日75歳で亡くなった。ドラマデビューした彼の最初の番組で田村亮と丁稚役で好演し、その後数々のドラマでも活躍したが、私が音響効果を担当したこのドラマではお互い面白いドラマ作りに頑張ったことは今でも忘れられない。高視聴率達成の未知への挑戦,とも言えた。私より7歳下のタレントさんで歌手としては沢山のヒットを飛ばしていたが、ドラマのことは全く初めての手探り状態だったが、彼の持ち前の頑張りでやりとげてお互いに満足の行く結果を得れたと思う。「星のフラメンコ」という歌でNHK紅白にも出たが才能があったのだろうか、大河ドラマでも活躍した。前立腺がんで長く闘病したが遂に命尽きた。橋幸夫、舟木一夫という当時の御三家という人気歌手も有為転変、人生いろいろ、したいことがまだあったと聞く。ご冥福を祈る。75歳、まだ若かった。

 

天声人語を見ていて私がワイドショーを担当していた頃横井さんにインタビューしたことを思い出した。健康の話で出て頂いたが名古屋のご自宅で収録した。お元気だったがマスコミに振りまわされたのが一段落、園芸や陶芸に打ち込んでおられる日々、取材の後に手作りの花瓶を断る私にプレゼントして下さった。今も家に置いてあるが横井さんはその後薦められて選挙に出られたり、いろいろ悪口を言われたり、散々だったが、結婚された奥様とは仲が良かった。横井さんが亡くなった後も奥様とも年賀状のやり取りは続いている。横井さんは素朴な人だったがこの世界に振りまわされた一生だったのだろう。奥さんと陶芸が心の安らぎの場だった。

 

あれは 50年まえの こと・・・ 

書棚の上に無造作に置いてある花卉・花瓶のなかの一つ、真ん中の花瓶が横井さんに戴いたものだ

 

横井さんは27年ガム島で潜伏56歳で帰国、82歳の壮絶な人生の幕を閉じた。奇しくも今年1940年生まれの

私も82歳。82歳の私の人生も彼の人生と同じようなジャングルで必死に生きて来たようにも思えてならない。

 

陽は落ちて 月が沈み また陽は昇る

 



朝陽











                                                                                                                                                      Back to Page of Contents